DanceDanceDance@YOKOHAMA2018 事業報告書
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評論家、アートライターなど5名の専門家からご意見・ご感想をいただきました。三菱UFJリサーチ&コンサルティング 芸術・文化政策センター長  太下 義之 「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA」は、現在日本で開催されているコンテンポラリー・ダンスのフェスティバルの中で最高の水準のプログラムであると私は思う。なお、ここで言う「最高の水準」とは、単に個々の公演におけるアーティスティックな水準が高いというだけではなく、幅広い市民に対する裾野の広がりにも神経が行き届いているという意味である。 特に、横浜ベイスターズのチア・チームを取り込むというアイデアには脱帽である。実に横浜らしいプログラムであり、参加した子供たちの目が輝いていたことが印象的であった。  また、近藤良平プロデュースの「レッド・シューズ」もSNSを活用して市民を巻き込むことに成功していたように思う。 今後は、超高齢社会に向き合うダンスの模索など、社会包摂的なプログラムをより強化していけば、より素晴らしいダンスの祭典になるのではないか。舞踊評論家  岡見 さえ 2か月間という長い期間にわたり、あらゆるジャンルのダンスを扱うフェスティバルでありながら、散漫な印象にならず、非常に充実していた。「リヨン・ダンス・ビエンナーレ」との連携も、フェスティバルに新たな歴史を開き、ダンス都市・横浜を国際的にアピールする優れた選択だった。 「トップアーティストプログラム」では、日仏のディレクターの選定による公演の質が高かった。ドミニク・エルヴュの国際プログラムは、世界のダンス界の水準とトレンドを伝える啓発的な役割を果たし、ダンスが娯楽にとどまらず高い価値を持つ芸術であることを改めて伝えた。 「市民参加プログラム」は企画が優れ、街全体の祝祭ムードを高めていた。また、多彩な市民のダンスの実践を可視化し、ダンスの街・横浜を力強くアピールした。 「次世代育成プログラム」は、多彩な講師を迎え、ダンスを通して参加した子供たちが体を動かす楽しさ、振付を覚える面白さ、共同で成し遂げる力を身につけることのできる、非常に意義のある企画だった。アートプロデューサー・ライター  住吉 智恵 夕暮れの港を借景に象の鼻パーク 特設ステージで上演されたバレエ公演は、おおらかに開けた視界のなかでスペクタクルに展開され、時おり汽笛や曳航する船影も演出効果をあげて、劇場文化に日頃あまりなじみのない観客層を惹き付けていた。 劇場プログラムでは、「リヨン・ダンス・ビエンナーレ」との連携により、フランスの舞台芸術ならではの豊潤さと多角的な身体性を表現していた。 市民参加プログラムのフィナーレは、荒天による変更にも関わらず、むしろ商業施設の猥雑な空間のなかに踊る人々の熱量が凝縮されて、圧巻の祝祭性を見せた。 こういった華やかな舞台と平行して、地道に行われた次世代育成事業のワークショップはたいへん丁寧な指導が心がけられていた。幼児は親子でからだあそびの楽しさを覚え、小学生は単独で果敢にヒップホップの振付に挑戦していたが、いずれも講師の指導経験の豊かさが反映され興味が尽きなかった。95

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